ヨルの探偵Ⅰ


 都市伝説のような夜の探偵屋。実際に、電話を掛けてくる人はいる。でも、誰しもが疑問に思うはず。

 ────何故、普通の探偵屋に調査を頼まないのか?

 存在するかしないかわからない謎の探偵屋に頼むより、しっかりとした探偵屋に頼む方が確実で安心ではないのか。

 それはもちろん、頼めない理由があるからだ。

 そう。電話を掛けて来る人は──


 〝頼む内容を公に出来ない〟人たちだからだ。


 もしくは、お金がない、既に他の探偵屋に依頼したが無駄足だった、の場合。

 所謂、こちらからすれば厄介な人たち。

 それを、こちらは格安もしくはお金以外で報酬を受け取り、ほぼ確実99%で依頼された内容をこなす。

 だから都市伝説のような噂にされ、厄介な者たちが寄ってくるわけだが……。


「仕事は選びたいよね〜」

「ヨルは依頼選んでるじゃン! 半分は博打だけどサ!」

「手札は多い方がいいからねぇ。でも最近は碌でもない内容が多くて困っちゃうよ。能無しばっかり~」

「……ヨル、怒」

「いや、怒ってないけど」


 怒ってない怒ってない。ただの文句です。

 しわ寄せがこっち来て忙しいから文句も出ちゃう。だって本来なら、私はただの女子高生だ。

 大人の馬鹿な尻拭いなんてごめんだし。

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