ヨルの探偵Ⅰ
真夏の雪解け


 氷が溶ける。

 水滴が垂れる様子を漠然と眺めながら、落ち切る前に指先で掬った。


「タイムリミットが近いナ……」


 音を立てて、秒針は廻る。

 臆病者は今日を憂いた。そして、まだ来ぬ終わりの日を悟って、そっと息を潜める。



 氷は形をなさず、消えた。



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