ヨルの探偵Ⅰ
顔を上げて、視界に映る双子の紗夜と夜白は本当に重なる部分があって似てるなと思いつつも、敢えて言わずに話題を戻した。
「……まぁ、今回の依頼は〝彼等〟に協力してもらうわけだし頑張ろうねぇ」
「……意図せずだろうけど」
「使えるモンは使うンダヨー!」
そうだね。勝手に役立ってもらうよ。
ポツリ、呟く夜白に他人を好き勝手動かすことに一切の配慮もないマレくんが拳を上げた。つられて、私も手を上げる。
けどすぐ、パタ、とバーカウンターに落ちた。
「…………やる気ないな」
「ヨルは仕事はちゃんとしますから大丈夫ですよ。今はそっとしておきましょう」
「アハハ、ヨルは仕事以外ちゃんとしてナイみたいな言い方ダ〜」
「ちっ、違いますよ! ヨル! 違います!」
こら、紗夜までからかわないのマレくん。
焦って弁明する紗夜を落ち着かせながら、今頃彼等は必死なんだろうなとちょっと哀れんでしまうけど、同情はしない。
私の考えなんて知りもしない彼等が、私たちの手のひらで踊る様子が目に浮かび、自然と口角が上がる。
全ては私の思惑通り。あの手この手で、追いかけ回す。地の果てまでも。
テンションが上がったのか酒盛りを始めた3人を横目に、私もグラスにあるエル・ディアブロと名のついたお酒を飲み干す。
さてさて、ここから先は気を付けて。
悪魔に手を借りたいと言うならば、さぁ代償を。
「……みつけてごらん」