ヨルの探偵Ⅰ

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 緊張で震えた手で、病室を開けた。

 目線の先には、母さんがいる。

 久しぶりに会った母さんは少し痩せていたけど、いつもと変わらない笑顔でそこにいた。

 ふっと目を細めて微笑む姿に、涙腺が緩む。


「誕生日おめでとう、虎珀」

「ありがとう、母さん」


 俺は、ずっと会いたかったのだと。

 寂しかったのだと。

 微笑む母さんの姿を見て、そう思った。


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