ヨルの探偵Ⅰ



 病室を出ると、翔くんが壁に背を凭れてさせて待っていた。

 なるべく足音を立てず静かに近づき、2人が病院に残ることを伝える。暗い病院から早く退散しようと私たちは外に出た。

 外に出て夜空を見上げると、雲一つない。

 まるで、世界にふたりだけの気分だ。

 会話をすることもなく病院の敷地を出て、終始無言の翔くんに言葉をかける。


「終電ないよね。どうする? タクシーなら、私ん家までは遠くないから来る?」

「……こっち」

「あれ、えっと……どこ行くの?」

「ホテル」


 そっかー。ホテルかー。

 …………ん? ホテルって言った?

 脳が言葉を処理する間に、私は腕を掴まれズカズカと大股で歩く翔くんに引っ張られるようにして歓楽街に足を踏み入れてしまった。


「ドードー! まてまて! ストップ!」

「却下」


 え、なんで却下?

 確かにね、タクシーは夜間料金だし、ビジネスホテルにでも泊まった方がいいとは思うけど、どう考えてもそっちはピンクのラブホ街。まってまって。

 散歩を拒否する犬のように、ギュッと足を踏ん張ってみるけど悲しきかな無意味。

 ずるずると引き摺られて、否応なくラブホの一室にお泊まりチェックインしてしまった。


「──わふっ」


 そのまま部屋に入るなり、ぼふっとふかふかのベットの上に転がされ、反応が遅れる。

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