ヨルの探偵Ⅰ


 翔くんにしては乱暴で気遣いがない行為だ。身体を捻らせ、上半身を起こそうとした私は息を詰めた。

 ぎし、とベットが軋む。


「これは、予想外の展開だなぁ」

「……」

「この後は? どうしたい?」


 私に覆い被さる彼の耳元では、シルバーの2連のピアスが揺れていた。

 表情は一切変わってない。整った顔立ちは恭と似てるはずだけど、どこか決定的な違いがある。

 …………〝目〟かな。

 馬乗りになって両手首を押さえられ、押し倒された状態でまじまじと翔くんの顔を観察してると「見すぎ」と体重を全てかけられた。

 身体が密着する。息が耳を掠って擽ったい。


「なにもしてこないなんて、紳士だねぇ」

「奪って手に入れたいわけじゃねぇから、気長に頑張る」

「ふははっ、まじかー」


 ほんっとに可愛いな、もう。

 恭の面影をどこか感じながら、身体を起こす。恭とそっくりの、無機質のようで意志のある真っ黒な目が、私をいつまでも捉えた。

 それにたじろぎつつ、翔くんの目元に手を持っていく。綺麗な形のアーモンドアイだ。

 あ、おでこにほくろ。可愛い。

 恭が王様だとしたら、翔くんは王子様だな。まだどこか幼い彼は、これからもっと成長するんだろう。

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