ヨルの探偵Ⅰ
傍から見れば、バカップルのように戯れてイチャついていた。翔くんといると心が安らぐ。不安定な精神がフラットになるのだ。
「……ふぅ」
「月夜、あんま首元で息吐くな。やべぇから」
「なんか落ち着く匂いする」
「やめろって……」
すんすんと首元で匂いを嗅いでると、擽ったいのか体を捩らせた翔くん。でも、私を引き離したりしないから調子に乗る。
形勢逆転と言わんばかりに、逆に私が押し倒した。
見下ろす形なれば、片腕で顔を覆う翔くんの耳と頬が少し赤くなってるのが見えてしまう。
こういうところ、計算だとしても可愛い。素でやってるなら、もっと可愛い。
「顔見せてくれないんだ」
「っ、馬乗りになんの、やめろって」
「さっき自分もしたじゃん」
たじたじの翔くんに、母性芽生えそうだ。
基本、龍彦然りマレくん然り、好き勝手されることが多いから、自分がいざ好き勝手する立場になると楽しくて仕方ない。
反撃されないのをいいことにちょっかいをかけまくっていると、下から拗ねた顔の翔くんが私の腕を強く引いた。
「わっ」
「年下からかってると、痛い目見んぞ」
硬い腹筋に手を当てた瞬間に、強く腕を引っ張られて驚く間もなく胸板に着地した。
一連の流れに、思わず呆然とする。
身体が全部乗っかる形になってしまって、片方の手首は掴まれ、もう片方の手は胸板に乗ってる。そして困ったことに動けない。
何故なら、翔くんの片手が私の腰に回ってるから。
捕まっちゃったな。完全に。