ヨルの探偵Ⅰ
身体を起こせなくて、ちらりと翔くんを見上げると獲物を見つめるような目だった。
食べられる、そう思った。
「──……」
でも、実際その目に吸い込まれて行動を起こしたのは私の方で。
唇が、一瞬合わさり、離れる。
その瞬間、妙に翔くんの息遣いやシーツの擦れる音がはっきり耳に届いて、何も考えられなくなった。
「あ、ごめん。キスしちゃった」
「……っかい、」
「え、なに? 聞こえなかっ──」
「もういっかい、キス」
耳に届いた瞬間、負けだと思った。
だって、可愛いと思ってしまったから。
唇がくっついては離れる。小鳥のようなキス。どんな表情をしてるが気になって瞑っていた目を開けた。
視線が交差する。
お互いが、息を呑んだ。ほとんど同時だった。
「──ん、ぅ」
「、」
一気に、深くなる口付けに息が漏れる。
腰に腕が回され、引き寄せられた。密着度が上がって体温を共有される。頭をしっかり手で固定され、酸素が薄くなった。
嫌悪感はない。ひたすら与えられるだけのキスに酔っていく。
どれくらいそうしてたかわからない。
おわりは、唐突だった。
「……なんか、鳴ってるね。スマホ」
「だな」
「ちょっと確認してくる」
現実に引き戻されたような感覚だった。
どちらからともなく身体を離した。名残惜しくも感じたけど、お互いにこれ以上はまずいとわかってたから何も言うことはなかった。
ふわふわしてた思考が急にクリアになったせいか、反省しながらベットを降りる。