ヨルの探偵Ⅰ
テーブルの上に置かれてたスマホを確認すると、一通のメール。表示されてる名前を見て、舌打ちが漏れそうになった。
嫌がらせか、マレくんめ。
〈ボクとのキスより、良かっタ?〉
そう書かれた文面と、舞い込んできた気になる依頼の詳細。
今ここで詳細を確認したいけど、むりそうかな。後ろで起き上がった翔くんの気配に動きを止め、振り返ってから口を開いた。
「知り合いからだったー。お風呂先どうぞ! あ、一緒に入っとく?」
「一緒にお風呂入ったら止まれる自信ねぇから、遠慮しとく」
「ふははっ、かわいい理由だね」
「どこがだよ。今日はもう何もしねぇからな」
はいはい。わかってるよー。
翔くんをお風呂場に誘導して、シャワーの音が聞こえたところで通話を発信。相手はワンコールで出た。
《なにぃ? ボクに何か用〜?》
「用件はわかってるでしょーが。監視するのやめてよね」
《ラブホに入るとこまでしか見てないヨ》
「それが嫌だって言ってんのバカマレくん」
全てわかっていてその口調、すっとぼけマレくんに憎たらしさすら感じる。
そもそも絶対紗夜にハッキングさせて監視してるんだから、夜白にも紗夜にも伝わってるってことでしょ。
ますます嫌だ。
身内ネタにされること、待ったナシだもん。