ヨルの探偵Ⅰ


 こんな可愛いこと言われたのに、そろそろ動かないといけないから置いていくのが心苦しいよ。

 多分、私がいないとこで朝陽はしょんぼり落ち込むんだよね。虎珀くんは前より水無瀬家にいる時間短くなっちゃったし、今も実家にいる。

 朝ごはんを食べ終え、宿題をするからと部屋に戻っていった朝陽を見送り、私はソファーに座った。


「……キャバ嬢かぁ」


 真っ黒なテレビ画面を眺めながら、無意識に声が漏れる。

 身体をソファーに沈め、脳内の情報を片付けた。この時間も勿体ない。ファングとやらが活発的に動き出したなら、こちらも早々に手をつけないと。

 でも、翔くんすら「家にいて」と一言言った。疑問に感じたんだろう。この突発的な活動に。

 実際、変ではある。私が首を傾げるくらいには。

 あちこちで暴れ回っている割には、被害者が少ないのだ。つまり怪我人がいない。
 
 そもそも、勢力分散させてどうする。人数が多いのを有利だと思っているなら分散する意味がない。なら理由は一つ。


「bsを分散させたいのかな?」


 となると──


「目的は、私かなぁ」


 そうだね、これがしっくりくる。

 私も存在も知れた。これは、敵にとっちゃ好機。わかりやすい弱味で、脅し材料だからだ。

 なーんだ、笑っちゃう。

< 364 / 538 >

この作品をシェア

pagetop