ヨルの探偵Ⅰ
こんな可愛いこと言われたのに、そろそろ動かないといけないから置いていくのが心苦しいよ。
多分、私がいないとこで朝陽はしょんぼり落ち込むんだよね。虎珀くんは前より水無瀬家にいる時間短くなっちゃったし、今も実家にいる。
朝ごはんを食べ終え、宿題をするからと部屋に戻っていった朝陽を見送り、私はソファーに座った。
「……キャバ嬢かぁ」
真っ黒なテレビ画面を眺めながら、無意識に声が漏れる。
身体をソファーに沈め、脳内の情報を片付けた。この時間も勿体ない。ファングとやらが活発的に動き出したなら、こちらも早々に手をつけないと。
でも、翔くんすら「家にいて」と一言言った。疑問に感じたんだろう。この突発的な活動に。
実際、変ではある。私が首を傾げるくらいには。
あちこちで暴れ回っている割には、被害者が少ないのだ。つまり怪我人がいない。
そもそも、勢力分散させてどうする。人数が多いのを有利だと思っているなら分散する意味がない。なら理由は一つ。
「bsを分散させたいのかな?」
となると──
「目的は、私かなぁ」
そうだね、これがしっくりくる。
私も存在も知れた。これは、敵にとっちゃ好機。わかりやすい弱味で、脅し材料だからだ。
なーんだ、笑っちゃう。