ヨルの探偵Ⅰ
暗中模索とインテント
────ピピピピピピッ。
いつにも増して煩わしい音が聞こえ、目が覚める。
覚醒しない寝惚けた頭で現状を把握するも、困ったことに記憶がない。なぜ私は、自室でシャツ1枚と下着オンリーでベッドに行き倒れているんだろう。
アラームを止め、頭にいっぱいのハテナを浮かべたまま適当に大きなTシャツを着て部屋を出ると、タイミング良くリビングの方から声が聞こえた。
昨日の失態を思い出さないまま、声のするリビングに顔を出す。すると、まだあどけない顔をした我が弟と我が家に住み着く弟の友達がこちらに顔を向けた。
「……おはよー?」
「……おはよう。昨日ベロベロに酔ってへべれけで俺に絡んだ挙句、粉チーズをリビングに撒き散らしたお姉ちゃん」
「えー、うっそぉー。……ごめんなさい」
うわん、ガチ怒。
しかも何も記憶ないから、謝ったところで無意味なものとなってしまう。
こちらを一瞥して、またすぐにフライパンに視線を戻した我が弟こと朝陽に、「ごめん〜」と擦り寄ると、住み着いた我が弟の友達が笑いながら声を掛けてくるから嫌な予感がした。
「いやマジマジ。オレ、朝陽に絡んで粉チーズ振りかけてる動画撮ったもん」
「……ねぇ、虎珀くん。欲しいもの何でも買ってあげるから動画は消してください」
「あ、見る? 面白いよ?」
「消してってー! ごめんてばー!! うわーん!」
ほらもう! どんなイジメだ!
スマホを持って逃げ回る虎珀くんを追い掛ける。
これが中学3年生なんて世も末だ! 意地悪が小学2年生レベルでマレくんより酷い! いや、今回は100%私が悪いけどね! 土下座もんの悪酔いでしたけどね!
でも、動画は消して欲しいよ!!