ヨルの探偵Ⅰ
店内を歩く黒服を呼び止め、聞いてみる。
「今日、マリカって出勤してます?」
「マリカですね! 19時半からの出勤なので、もう少しお待ちいただければ指名できますよ」
「わかりました。じゃあ、お願いします」
今日はツイてるー!
ダメ元で聞いてみたけど、運がいい。思わずガッツポーズしそうになった。
にひっと龍彦の方に顔を向ければ、乱雑に頭を撫でられてウィッグが外れないかヒヤッとした。わかっててやってるでしょこんにゃろ。
龍彦の手を叩き落としながら、マレくんに着信を入れる。通話が始まったと同時に、録音を開始してテーブルにスマホを置いた。
「夜白の耳かァ?」
「うん。多分ビンゴだけど、一応ね」
確認って大事だからね。
それにしても、私と龍彦の見た目の差すごいな。変な話、好みが分かれそうだ。
私についたキャバ嬢イチゴちゃんは美青年な私を気に入ってたけど、龍彦についたルルちゃんとやらは龍彦の方が好みだったっぽいし。
そういった面でも観察してみよう。
待つこと数分。──ようやく、マリカが現れた。
「マリカです。よろしくお願いします」
一際、目を引く夜の蝶だった。
パープルのロングドレスを纏った彼女は、先程の若いキャバ嬢と違って落ち着いた様子で、お辞儀をして名刺を差し出した。