ヨルの探偵Ⅰ
心の中で、これは人気なのわかると言葉を漏らす。
決して派手ではないが、見映えする容姿。控えめに笑うとできるえくぼがチャーミングだ。気遣いや言葉も丁寧で、落ち着いている。
隣に座るマリカという女性を見て、客観的にそう思った。
もう1人やってきた派手なキャバ嬢が龍彦に絡んでる様子を傍目に、ちょっとアプローチを仕掛ける。
「白夜と言います。……マリカさん、とても落ち着いていて人目を引きますね」
「そんな、とんでもないです」
「引く手数多でしょう。どういう方がタイプなんですか?」
──声は、確実。
通話口で夜白も聞いてるだろうけど、間違いなさそうだ。それに、手首にある流れ星のタトゥーも一致している。
愛嬌のある微笑を口元に湛えながら反応を窺うと、マリカは緩く巻かれた栗毛の髪を耳にかけ、薄いピンクで彩られた唇を開いた。
「中性的で、綺麗な子がタイプです」
中性的。綺麗な子。
下を向いて照れるようにそういった彼女の言葉に、どこか引っ掛かりながら笑顔で言葉を返す。
「それじゃあ、連れの彼よりは僕の方がタイプと思っていいですかね」
「ふふっ、そうですね」
「それはラッキーだ。この容姿に感謝するよ」
可愛らしい笑顔で言葉を返さなかった彼女に、やっぱり厄介だと思う。
ま、ここまで彼女の素性が知れれば、あとは何とかなる。今日のところは撤収だ。龍彦が限界そうだし。
ニコチン摂取しすぎでどっかのお巡りさんみたいになってる龍彦を見て、急いで会計を済ませた。
そこまで飲んでもないから値が張るわけでもなく、ポケットマネーから支払い、瀕死の龍彦とエレベーターに乗る。