ヨルの探偵Ⅰ


 終わった喧嘩に、こちらも一息つく。

 それにしても、やっぱファングは数が多いだけで統率力は微妙だ。寄せ集めと思った方が正しいのか、頭上で「雑魚」と呟く龍彦に同意だ。

 でもトップは頭良さげだし、これも計画の一部って感じかな。

 こんなバッドタイミングなハプニングがあるなら、あちらのトップさんも現れるなんてドッキリあってもいいんだけど、姿を見せる気配はない。


「そんなに都合は良くはいかないかぁ」

「……オイ、こっち来い」

「へ? 龍彦どこいくの……」


 倒れたファングの連中を確認してる優介くんたちを眺めていれば、急に龍彦に腕を掴まれてまた引き摺られた。

 さっきから引き摺られてばっかりなんだけど。

 文句を言おうにも静かにしてないと面倒だし、黙ってされるがまま横の細い裏道に入る。

 整備されてない細道を抜け、広い裏路地に出て、言葉を発しようとした瞬間、大きな手で口を塞がれた。


「…………全員いたのか。…………あぁ、そいつらはほっといていい。……どうせ、捨て駒だからな……。目的は、…………。今日は、撤収だ……」


 広い路地裏のすぐ横。使われてない廃ビルの中から聞こえてきた声に目を丸くした。

 短い電話だったが、電話の主が誰なのかすぐにわかった。そして、それ以上に龍彦の嗅覚に驚く。勘だけでこうも都合良くいくものかね。

 ファングのトップ。兵頭 伊織。

 頭がキレるってのは間違いじゃなさそうだ。

 足音が遠ざかってくのを確認して、閉じていた口を開いた。


「龍彦ありがとー、すきー」

「簡単に好きとか言ってンじゃねェよ、ガキ」


 たった数時間にしては、いい収穫。落ちていたテンションが上がった。

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