ヨルの探偵Ⅰ
僕たちの数歩先で談笑している2人に、羨ましいとそわそわしてる天邪鬼な蒼依と恭の背中を強く押す。
前に押されて驚きつんのめった2人に、呆れた口調で「行ってくれば?」と言うと、飼い主によしと許可をもらえた犬のようにぴゅーんとすっ飛んでった。
心做しか、耳としっぽが見える。ぶんぶん揺れてる。……僕、疲れてるのかな。
「莉桜は、行かなくていいのか?」
頭を抱えた僕に、優介が聞いてくる。
動くのすら億劫だし、「はあ? なんで僕が」と怪訝な顔で優介の言葉に返すと「アイツらに取られちゃうぞ」と言われた。ますます意味がわからない。
なんの心配してんの。と優介の表情から探ると、とんでもない勘違いがされてるかもしれない状況に顔が青くなった。
まさか、優介がお節介とか? え、本当にまさかなんだけど……。僕が月夜に向けてる感情、勘違いしてない……?
「優介。もし僕が月夜に恋愛感情持ってるみたいな勘違いしてるなら……今すぐその考え捨てて」
「……えっ、違うのか?」
そのまさかだった。
ぐっ、と言葉が詰まる。なんでそういう方向性になるかな。誤解を招く言動も別にしてないのに。
僕は頭をふらつかせながら、全力で「違う」と首を横に振った。
「僕のはそういう類の感情じゃないから」
「気づいてないだけじゃないか? 後悔してからじゃ、遅──……」
「やめて」
言葉を遮る。沈黙が流れた。
数歩先で、月夜と翔が、蒼依と恭に邪魔されてるのが視界に入る。
僕の冷ややかな言葉に、自分が何を言うつもりだったのか気付いた優介が、明らかにバツが悪そうに口を横に結んだ。
だから、言ってやった。
「自分の後悔と重ねて、期待するのやめて」
言われたくないだろう。その言葉を。