ヨルの探偵Ⅰ
むぅ、と頬を膨らませる。不服な私は舌戦を繰り広げたいところだけど、一向に話が進まないどころか始まりもしないのでやめてあげた。
朝陽と虎珀くんが部屋に戻っていったのを確認し、笑顔で「話そっか」と彼らに告げる。
「どこから話そうか……」
「んん〜……」
いざ話し合いとなると、何から話せばいいのかな困ってしまう。司会進行の優介くんが悩むように首に手を置いた。
私としては、最近の事情はほとんど知ってるし、順を追って説明されたとてだ。時間短縮しよ。
「前提として、言っとくね」
「ん?」
「今回の事情はある程度知ってたし、みんなが黙ってた理由も理解してる。別に全部包み隠さず話せとか言ってるんじゃなくて、現在進行形で起きてることに関わらせろって言ってるのね」
「あ、え、怒ってる?」
口調が荒くなってしまった私に、ぽかんと驚く優介くん。「怒ってはない」と返して、ため息をついた。
大前提として、これまで起きたことを強制的に話せと言ってるわけじゃない。むしろ私も話したくない事情はある。
秘密はお互い様なのだ。
そこは、もう一旦置いておくとして。
「無関係じゃない私に、報連相くらいしてよってこと!」
ガバッと勢いよく起き上がる。驚かせるつもりじゃなかったけど、近距離にいた莉桜くんと翔くんの目を丸くさせてしまった。
「報告! 連絡! 相談!」と、蒼依くん、優介くん、恭の順番で、ビシっと指を指す。
そう、これこれ。言いたかったやつ。
満足した私がソファーに逆戻りすると、翔くんが大袈裟にビクついたから「翔くんもね、デコピンの刑に処す」と一発喰らわせた。
もちろんダメージはほとんどない。
ひたすらしょんぼりして、おでこを摩る翔くんが可愛いだけだ。