ヨルの探偵Ⅰ
そして時間は過ぎ。夕方。
「厄っっっ介だなぁ〜〜〜〜!!!」
ぐでんと数時間前と変わらぬ体勢のまま、想定していたより厄介で不毛な現状に大声を出した。
私の言葉に申し訳なさげな優介くん、ほとんど無の境地の恭、開き直った蒼依くん。莉桜くん以外は反省してよ。
ちなみに話し合いが始まった途端、翔くんはすやすや。彼の年下気質はなんだろう? 末っ子すぎる。
「巻き込んじゃってごめんな」
「それはもう受け入れてるから大丈夫。でも、ここまで身動き取れないとはねぇ……」
ここまでの話し合いで何度も謝ってくる優介くんに大丈夫と手を振りながら、彼らの置かれてる現状に面倒だと内心悩む。
荒くれファングと違い、所謂bsは穏健派。不良とは言えど、治安維持にも貢献していて、余計な抗争は望んでないとのこと。
それは、まぁわかる。
問題は、アチラさんがバリバリ敵意を持って関わってくることだ。
敵意のあるアチラさんに、穏便に済ませたいコチラ側。立場が逆転することはなく、ひたすら防衛に励むばかり。
「正直いうと、なーんの意味もないよね! ヤクザの抗争の方が覇権争いやら縄張り争いがあってマシだよ。ガキが喧嘩して得るものなんて、メンツしかないじゃん……」
「すっげぇ毒舌吐くじゃねぇの」
「事実でしょー。それに、勝っても負けても大事になれば次こそ退学じゃん? 君ら」
「……うっ、そうなんだよ……」
責めてるわけじゃない。
もはや被害者はコッチだ。未成年の学生という肩書きがある以上、選択肢は狭まる。
彼らが留年した理由も含め、次こそ問題を起こせば間違いなく留年組の3人は退学処分。大立ち回りしてるファングの連中は、そこんとこ顧みない。
「いくら今を穏便に済ませても、根本的な芽を摘まないと終わらないだろうし……」
言葉を詰まらせる彼ら。心当たりは大いにあるだろうね。
不意に目があった莉桜くんも「だろうね」と他人事のように呟いた。
びっくりするくらい興味なさそうな反応だ。