ヨルの探偵Ⅰ


 根本的な問題。それは、間違いなく留年組の3人が留年する羽目になったファングとの一悶着……と言えるかわからない大きな抗争の火種。

 その火種を消す必要がある。そうした上で、和平条約締結が必要なのだ。


「うぅ〜ん。戦力図からしても、大差ないのかぁ」

「僕たちのとこは少数精鋭って感じ。で、アッチは人数が多い。シロアリみたいに湧いてくるよ」

「うわぁ、キモイ。駆除しよ、駆除」

「月夜ちゃん……。意外に口悪いよな」


 え、まぁね。

 自覚あるけど、優介くんに言われると言葉遣い気をつけたくなる。苦笑いで誤魔化しながら、私はまた悩んだ。

 実は、ファングとbsは結構決定的な違いがある。ファングはもう学校規模の集まりで、白州高という奴らが9割。もちろん、兵頭 伊織もその高校だ。今時、不良の巣窟みたいな学校があることに驚きだよね。

 それはさておき、bsは学校の一角に過ぎない。一般生徒から遠巻きにされ、問題児扱いすらされてるが、ただの集まりだ。成り行きで喧嘩してるだけみたいな。

 どちらも上下関係はないが、ファングの方は利害一致なのか兵頭 伊織の元についていて、bsの方は様々な理由から恭の元に集まっている。

 そして、喧嘩に勃発する理由は様々。ガンつけられただの、気に入らなかっただの。……幼稚だ。

 そんなこんなでここまで大きくなった対立だが、実際は、やっぱり根本的な確執が理由。こっからは、私のお仕事の話になる。

 むしろ、巻き込まれて可哀想なのは何も知らない人たちの方だろうな。


「ま、今はやることはひとつだね」


 ぜーんぶひっくるめて、まずひとつめ。

 なにか案があるのか? と言いたげな恭や優介くん、蒼依くんに、笑顔で返す。
 
 もちろんあるよ。簡単だよ。それはね──……


「アチラの手駒を減らした上で、身動きを取りにくくする」


 ここからは戦争の歴史に倣って、やってくよー。

 キョトンと呆気に取られた顔をする3人とは対照的に、この中で一番策士な莉桜くんと私だけが愉しそうに笑っていた。

 こっからは、私の番だ。

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