ヨルの探偵Ⅰ
悪役のような笑みを浮かべる。
ガキのチャンバラに付き合ってる暇ない。お生憎こちとら依頼が重なりすぎてパンクしそうなので、手加減は微塵もする気がないのだ。
あと、私、──聖人じゃないからね。
「減らすっていっても、喧嘩じゃないよ。まず、雑魚の集まりとは言えど、動ける人もいるはず。そういうのを潰していこう」
「喧嘩じゃないって? 具体的には?」
「優介、もっと頭使って。脅せばいいでしょ」
「そうは言っても、脅して言うこと聞くような連中じゃないだろ?」
「アイツらしぶといからね〜」
私の考えを汲んだ莉桜くんの発言に対し、優介くんと蒼依くんは難色の様子だ。恭は黙ったままだから、まだ模索中なんだろう。
私と莉桜くんの提案。君たちは考えつかない。それは、あまりにも優しいものじゃないからだ。
夕日が完全に沈む瞬間、辺りに帳が下りる。
悪役顔のまま、私は微笑んだ。
「脅す内容が〝殴る〟〝蹴る〟みたいなものなら効力はないよ。大切なのは、弱み。──家族、友人、恋人、そこから落としていこう」
夜が溶け込んだ。
完全に日が暮れ、部屋が真っ暗になった直後「電気つけなよ」とリビングに入ってきた朝陽によって人工的な明るさが私たちを照らす。
そこには言葉を失い、唖然とした彼らがいた。
キッチンで晩御飯を作り始めた朝陽が、この異質な空気に「?」と首を傾げている。
私の優しくない提案、発言に唖然としてる優介くんと蒼依くん。珍しく恭も目を丸くしていた。反対に、莉桜くんは平然としてる。
「どうする? これは提案だから、決定権は君らにあるよ」
「……そ、れは」
「僕は賛成だよ。悪いとも思わない」
朝陽がいるから幾分か声を潜めて話す。
空気を読んで莉桜くんがテレビをオンしてニュースが流れ、程よいBGMの中、狼狽える3人に追い打ちをかけるよに「賛成」と平坦な声が聞こえた。
その声の主に、少し目を見張って恭が振り向く。