ヨルの探偵Ⅰ
今まですやすや爆睡していたはずなのに、いつから聞いていたんだろう。
翔くんは呆気に取られている3人に向かって、「悩む必要もないだろ」と言ってのけた。莉桜くんもいつから起きてたんだという表情を向けている。
ナイス援護射撃だよ、翔くん。
「いや待ってくれ。即決はできない。うまくいくとは限らないだろ? 弱みがないこともある」
「弱みは作れる」
「逆上されたり、仕返された場合はどうするよ?」
得策じゃないと、優介くん蒼依くんは仄めかす。
もしも上手くいかなかった場合、こちらにダメージがあるため慎重なんだろう。蒼依くんからの言葉に一瞬、翔くんは思案した。
2人の不安は一理ある。脅す人選は大事だ。脅す方も脅される方も。見極めが大事。
だから──
「脅す相手を吟味する。もちろん、弱みを握って脅すんだから脅したこと自体も話させないようにすればいいだろ。あと、寝返らせればもっといい」
物騒なことを話してる自覚はある。
それでも、魅惑的で慈悲なんてない彼の発言に、ぶわりと肌がざわめいた。
そうだよね。最高だ。
頭がいいのはわかってた。けれど、見込んだのはそこじゃない。
1番ベストな回答を、持ってくるからだ。
「どうしよう……。翔くん、最高……。ほんっと可愛いね、よしよししてあげる」
「……ん」
「偉いよー。さすがだよー」
「ねぇ、僕は?」
「く……っ、可愛いの暴力……っ」
両手でわしゃわしゃと翔くんの髪を撫でていれば、拗ねた莉桜くんにノックアウトさせられた。
なにこれ? 可愛いの連鎖かな?
ほのぼのしてる私たちとは反対に、顔が引き攣っている優介くんと蒼依くんと額に皺を寄せた恭。うっわぁ……温度差がすごい。