ヨルの探偵Ⅰ
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夏の夜。暗闇に溶け込んで虫が鳴く。
そんな帰り道。
色の違う5人が、たった1人の同じ人物について考えを巡らせていた。
「彼女は、何者なんだろうな」
なんの他意も敵意もない言葉。
唯一の常識人と言われる彼から口から出た言葉は、至極単純な疑問だった。それに同意するように、「さぁな〜」と語尾の伸びた声が返ってくる。
ただの女子高生ではない。それはわかっていたはずなのに、わからない。
まるで、幻想の中だ。
「ずっと思ってたけど、今日確信したよ」
「……」
「危ういよね」
誰もが感じでいたことを優しくない彼が口にしたせいか、一時静寂に包まれる。
彼女といると、妙な感覚になる。それは一同が思っていたことだった。
彼女は、硝子みたいだ。
透明で、綺麗で、扱いに気をつけないと、割れてしまう。
そして、彼女は存在が美しい。彼女は、独自の世界が確立している。揺らがない。それが際立つからこそ、堪らなく恐ろしい。
彼女は、多分、どこまで堕ちても美しいままだから。
「消えそうだ」
不安が喉を通ることはなく、
漠然とした憂慮だけが、夜の空に広がった。