ヨルの探偵Ⅰ
やぁ! はろーえぶりわん!
「今日も元気にお仕事するよ〜!」
年がら年中薄暗いBARのカウンター席で高らかに拳を上げながら叫ぶと、ほとんど棒読みの「オー」という返事がマレくんから返ってきた。
うわ、絶対馬鹿にしてた! 今の反応!
腹いせに年中甘いものを常備してるマレくんから勝手にオレンジピールを拝借して、酒を飲み干す。
そんな私に、流し目で甘いボンボンショコラを頬張ったマレくんが笑いながら言った。
「で、ヨル? 出歩いてイイノ?」
「マレくんが呼んだんでしょーが。てか仕事だもん」
今の時間は午前1時。半夜。
bsの彼等とバイバイしてから約5時間ほどが経過してる。
夜ご飯を食べた後、泊まらず帰ってった彼等を見送り、怠ける私が今日何本目かわからないアイスの袋を開けた時、連絡は来た。
〈ヨルのサボり魔! 太るヨ!〉
この一文を読んだ私は、開けてしまったアイスを仕方なく、風呂上がりだった虎珀くんのお口にイン。服を着替え、彼等に問答無用で出掛けると連絡を入れ、ここにやってきたわけだ。
……が、それでは終わらなかった。
「うわー……目的地着いたから安全! って返信したのに過保護だなぁ」
「ワァオ、履歴も通知もスゴイ」
「連絡入れただけ偉くない? 黙って出てこなかったことを褒めてほしいくらいなんだけどぉ……」
「ソレは無理があるヨ」
マレくんの正論に、無言で煙草に火を付けて押し黙る。
ここに来るのいつぶりだっけ。久しぶりな感じがしてならない。去年は入り浸っていたのに今年は、と考えたところで寝不足の夜白が登場した。
もさもさの黒髪で目元が時々隠れて、余計にやつれたようにも見える。
「夜白オツカレェ」
「おつー。眠そうだね? 膝貸そうか〜?」
「…………いらない。水」
ふらふらよろよろの夜白に口角を上げ、煙草を銜えながら水の代わりに無色透明のウォッカを差し出すと無言で後頭部を殴られた。痛い。
酒なんか寄越しやがって、と非常に文句言いたげな夜白に、さすがにこれ以上は揶揄うのはやめてあげた。
あ、ごめんね。はいはい、水あげようね。うん。