ヨルの探偵Ⅰ
ちゃんと本物の水をあげて、ひと休みしたところで夜白は話し始める。
「……消えた子供の依頼、思ったより難航中」
「手掛かりなし?」
「……そうじゃない。名前も住所もデタラメだった。けど、夜職じゃ珍しくない。問題は、依頼してきた内容の詳細がわからないこと」
「なぁンにも、特徴教えてくれナかったしネ?」
紗夜は今でも部屋に籠ってパソコンで情報を探してくれてるんだろう。それでも探れない。
せめて、時期と性別、特徴が知りたい。
いつ子供がいなくなったのか。それは自分の子供なのか。なんで詳細を話さなかったのか。
行方不明届けを出さず、私たちに頼んでくる時点で訳アリだ。
「こんなん聞きに行った方がはや〜いのに!」
「……それがムリだから、俺と紗夜が寝不足なんでしょ。厄介な事案で、身元明かしてどうすんの? ……馬鹿?」
「アハハ! 夜白疲れて口悪いネ! サイコウ!」
腹立つなマレくん。眠剤盛って眠らせてやろうか。
頑張ってくれてた夜白が口悪くなるのは許すけど、やる気ないマレくんに馬鹿にされるのはムカつく。
ふぅー、と短くなった煙草を揉み消して、マレくんに煙を吹きかけた。
すると、嫌そうに目を瞑ったマレくんが仕返しと言わんばかりに甘ったるい空気を出してくる。
「ヨルのお馬鹿サン。ソレ、ベットのお誘いってイミだヨ?」
「知ってるー。でも天秤にかけたとき、マレくんの嫌そうな顔見るがでかかったー」
「性格悪いネ、そういうのキライじゃないヨ?」
「ふぅん。変な性癖持ってるね? マレくんて」
「…………げっ、他所でやれ」
揚げ足取りのような会話をしてる私とマレくんを交互に見て、夜白はげんなりと顔を顰めた。
やだなぁ、こんな場所でシないって。
誤魔化すように笑うと、警戒するようにキッと目を三角にして、頭を私の腕に押し付けてきた。野良猫が懐くってこんなかんじかな。
ま、夜白と紗夜は飼い猫で、飼い主は私だけど。