ヨルの探偵Ⅰ
〈 ?side 〉
顔も名前も知らない女を探せと言われたのがほんの数日前。夜の探偵屋に潰されたはずの同業者を探すゲームを始めたと言われたのが昨日。
どう考えても無謀な話にやる気をなくした俺は、ボスの弟という特権を使い、朝からサボることを決めた。
「ねむ……」
この学校の生徒である女子生徒に持ち掛けられた夜の探偵屋に関するゲームとやらのせいで、bsの大半は多大なる睡眠不足。
早々に俺と莉桜はばっくれ、莉桜は図書室に俺は最近見つけたいい寝床、裏庭に向かったわけだが……。
梯子のかかったコンテナの上。先客がいた。
「……無駄に綺麗な女」
すやすやと起きる気配もなく爆睡してる女が一人。
鎖骨らへんまである髪はよく見るとブルーグレーのような色味、がっちり瞼は閉じられているが睫毛は長く濡れたように艶美で、赤い唇と相まって色香が滲み出ている。
こんな綺麗な女がいたら目立つはずなのに、今まで見たことがない。
スタイルも、スカートから覗く足は適度に筋肉がついていて手首も腰も細い。
それに、寝ているからなのか女に近寄っても嫌悪感がない。莉桜程ではなくとも、女が嫌いなことに自覚はあるのに全くない。
騒々しい口の煩い女も、下心を露わに無遠慮に近づいて触ってくる女も、等しく嫌いだ。
いつの間にか遠ざけるようになっていて、関わる機会がなかったとはいえ、この無害そうな女に思いがけず興味が湧く。