ヨルの探偵Ⅰ


 溜まった白い煙を吐き出しながら、時間はかけていられないなと気持ちを引き締める。

 そんな私に、これまで一切発言せず、ただ傍観者を気取っていたマレくんがカウンターに肘をついて言葉を投げかけてきた。


「ムダな感情移入は、良くないヨ?」

「これは無駄じゃない。子供が苦手なマレくんは関わらなくていいよ」

「苦手ダケド、嫌いじゃないヨ」

「わかってる。はー、時間がないな……」


 釘を刺してきたマレくんに、線引きはしっかりしてると内心言い返しながら、焦る気持ちを落ち着けるよう煙草を吸う。

 唄ちゃんは千尋くんの家まで行ったという。男にも会って話を聞こうとしたが、問答無用で追い返されたらしい。

 すぐにでも男の素性を洗って、千尋くんの居場所を探さないといけない。

 それに話を聞いても、何故かピンとこないのがモヤモヤする。マリカが母親説、なんか違和感があるんだよなぁ。それだとこの状況の説明がつかない。


「絶対に関係してると思うんだけど……。どうしても繋がらないなぁ」

「母親説はナシ?」

「う〜ん、変だもん。親権が男にあるから取り戻したい母親説でも、男は千尋くんに興味もなく育児放棄でしょ? それに、素性も身元も明かせないのは何で? 依頼内容もおかしい。消えたってなに……」

「ウーン? 困ったネー」


 前科ありで問題を起こしてたから、親権がなくて千尋くんをこっそり……も変だ。納得がいかない。

 それに、なんで今更?

 タイミングが変だ。千尋くんが自分の子供で自分で育てたかったなら、もっとはやく行動を移してたはずだ。

 それに、消えたって言葉がおかしい。

 いきなり男と千尋くんが消えたわけでもあるまいし。何故わざわざその言葉を使ったのか。

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