ヨルの探偵Ⅰ
わからない。わからなすぎる。
とりあえずもうそろそろ紗夜と唄ちゃんが戻ってくるだろうし、夜白の料理も出来上がるだろうから、煙草の火だけ消そう。
紗夜は、物腰柔らかく丁寧な口調で穏やかだ。唄ちゃんを任せても問題ない。
不器用で言葉も遅い夜白だけど、子供の扱いに慣れてないだけだから、ここも問題はない。
あとは、マレくん。こやつだ、問題は。
「ここに一旦、唄ちゃん置いとくけど嫌な顔しないでよ? マレくん」
「イヤな顔なんてしてないヨ? ボク」
「滲み出てるんだよ、子供は敏感だからね気づくよ」
「ハーイハイ、気をつけマース」
うわあ、不安だなあ。
確実にマレくんと子供の相性は良くない。表面上にこにこしてるけど、目が笑ってないからね。
一抹の不安を残しながらも、ふとスマホの通知に莉桜くんからの連絡があることで、路地裏での出来事を思い出した。
こっちも、だいぶ不穏なんだよな。
〈明日、朝一で迎えに行くからね〉
莉桜くんからの文面に、あれ? と首を傾げる。
迎え? 来るんじゃなくて、迎え……?
何だか分からないけど、朝一で家に帰らないといけない。これはもしかしなくても睡眠時間ゼロで彼等と会わないといけないのか。
「はーあ、忙しい」
そう呟いて項垂れた私の元に、ワンテンポ遅れてご飯とともにバナナを持ってきてネタにしやがった夜白。
大爆笑のマレくんに私がぶちギレ、戻ってきた紗夜と唄ちゃんが慌てたのは言うまでもない話だ。