ヨルの探偵Ⅰ
ようこそ橘家へ
「ふわぁ、ねっむ……」
朝7時。結局、睡眠時間は0です。
目をしょぼしょぼさせ、怠い身体を引き摺りながらアスファルトを踏む。お酒も抜け切ってない。煙草臭いまではいかなくとも……う〜ん。
ガラスに反射して映った自分の姿。ブルーグレーの髪も顔もよれよれで失笑した。
朝まで必死に情報収集したから完全に顔が疲れきってる。これから彼等とまた会うなんてやだなぁ。体力的にもキツい。
「でもな〜、莉桜くんがな〜、うぅ〜ん」
「僕がなに?」
「気になるなぁ…………って、え?」
「おはよう。朝帰りみたいだね」
「!?!?」
返ってきた声の主に、驚いて飛び跳ねた。
ひょこっと肩口から顔を覗かせてる今日も麗しい莉桜くん。顔が拗ねてる気がしなくもないけど、気配消すの上手いね。
引き攣る顔の私に「ん」と莉桜くんが無言で指差す方向を見ると、おやおや。運転係のゴンちゃんと優介くんもいた。
穏やかな2人の元に、がっつり朝帰りの私が向かうのは肩身狭いんだけど──。
「動かないなら無理矢理連れてくけど?」
「……自分で歩きまぁす」
莉桜くんから逃げるなんてできるわけもなく、終始穏やかな笑みを浮かべてるのが逆に怖い優介くんと、全く状況をわかってないで笑顔のゴンちゃんが待つ車に向かう。
ちなみにゴンちゃんはピカピカ強面スキンヘッド。趣味は盆栽。もう一度言う、趣味は盆栽。
「おはよう優介くん、ゴンちゃん……」
「おはようございます夜さん!」
「おはよう月夜ちゃん、俺の隣に座ろうね?」
「はぁい」
そんなこんなの朝7時。
ぴえ、とゴンちゃんと優介くんの笑顔の対比に怯えながら車に乗り込んだ。