ヨルの探偵Ⅰ


 心底だるそうに補習を受けてる2人の姿が容易に想像ができて、笑ってしまう。

 ま、補習組がいないのは平和でいいとして、甘えん坊の翔くんはどこだろう? 迎えに来そうなのにいない。

 そう不思議に思った私を見透かした莉桜くんが、答えをくれた。


「翔も来たがってたけど、(ゆかり)さん……優介のお母さんに捕まってホットケーキ作ってる」

「そっか。……え? ホットケーキ?」


 私が炭にしてしまったホットケーキ。

 翔くんが居ない理由としては、優介くんママこと縁さんとホットケーキ作りの最中だかららしい。全く想像ができない。

 あの翔くんがキッチンでホットケーキ作り? 私の想像力が働かないよ。


「優介くんのとこのご両親って、どんな感じの雰囲気の人……?」


 できれば、会う前に少しでも情報を知っときたい。愛想は良くして、笑顔で挨拶は必須だとして、うう……こんな急な出会い方は不安すぎる。

 けれど、何故かその質問に困ったように優介くんは眉を下げた。


「俺の母親はちょっと勢いがあるけど、悪い人じゃないんだ。……ただ距離の詰め方がなぁ」

「大丈夫でしょ。絶対月夜は気に入られるし」

「そうだな。父さんも基本マイペースというか、人畜無害みたいな人だから安心してくれていいよ」

「……」


 安心はできないけど、莉桜くんが大丈夫そうってことは、いい人ではあるんだろう。距離の詰め方の部分気になったけどね。

 あと人畜無害ってなに……? カピバラとか?

 そんなこんなで着いた橘家。私は二度衝撃を受けることとなる。

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