ヨルの探偵Ⅰ
キャッキャッと喜んで跳ねる女の人──もとい優介くんのお母さんである縁さん。
初対面で、しかも人の母親に対して使うべき表現ではないのかもしれないけど、可愛らしい人だ。見た目も中身も、とにかくふわふわ。
小柄な見た目でぴょんぴょこ跳ねてる姿、ふわふわ揺れる髪、まん丸な目は笑顔で嬉しそうに細くなっていて、口角もちょんっと上がっている。
うん、びっくりだ。
「母さん、ちょっと落ち着いて。月夜ちゃん、びっくりしてるから」
興奮気味のお母さんを、慣れた様子で止める優介くん。
それで、ピタッと飛び跳ねる時間は終わった。
「あらあら、ごめんなさいね。はじめまして、優介の母の橘 縁です。どうぞよろしくね」
「はじめまして、水無瀬 月夜と言います。優介くんと莉桜くんにいつもお世話になっております。こんな早朝に手ぶらですみません……」
「いいのよ〜! そんなの気にしなくて! ほら、暑いから早く中に入って!」
「は、はい……。お邪魔します……」
これは、確かに距離の詰め方凄そうだ。マイナスな印象はないようで一安心。
テンションと圧に押されつつ、用意されたこれまたファンシーなスリッパを履いて家の中にお邪魔する。……ワァオ、やっぱり中も凄い。
白がベースの内装で、玄関前のシャンデリアに柔らかな絨毯、高そうな花瓶。あ、ウサギのぬいぐるみいる。可愛い。
ふりふり、ふわふわ、ひらひら、な世界観。
少し圧倒されつつも、リビングに案内されるとお父さんらしき人を発見。背筋を伸ばした。
「あなたっ! 見てこんな可愛い子が優介の友達にいるのよ〜!」
「そうだね、可愛らしいお嬢さんだ」
「でしょう〜! ほら、あなたもご挨拶して〜!」
えっ、挨拶は私がすべきだよね。
歓迎ムードなのは嬉しいけど、流石にマズいと先手を打ってさっきと同じように挨拶をすると、本当に人畜無害で優しそうなお父さんも挨拶を返してくれた。
「優介の父の、聡です。ゆっくりしてってね、月夜ちゃん」
穏やかそうに微笑む顔が、優介くんそっくりだ。