ヨルの探偵Ⅰ


 ホットケーキを食べながらそう考えていると、お見送りから戻ってきた縁さんがウキウキで「色々話したい」と言うから談笑タイムがスタートする。

 テーブルに頬杖をついて首を傾げた縁さんが、私を興味深そうに見つめてきた。


「モテるでしょう? 可愛いものね〜」

「全然です。彼氏がいたこともありませんよ」

「あら? 世の中の男子は見る目ないのね〜」

「──ちょっとまって。月夜、彼氏いたことないの? 嘘でしょ」


 なんだろ? 恋バナ? と思いながらも答えていると、突如横から莉桜くんが驚いた目を向けてくる。

 何故だろう。とても疑われているなぁ。

 それに、あの優介くんの困った顔。もしや優介くんも疑ってる? そんな嘘っぽい? ほんとなのに。

 事実を証明しようにも、本当ですとしか言えないので困ってると、少し驚いた顔の翔くんが詰め寄る形で詳しく追及してきた。


「まじでいたことねぇの?」

「う、うん、そうだけど……」

「何で?」

「え、何でって?」

「あ、そうよ! もしかして、興味ないとか?」


 縁さんの言葉に、翔くんの言葉の真意がわかってそういうことかと納得する。

 莉桜くんが言いたかったのも、そういう事だろうな。

 遊びでも相手がいそうなのに、付き合ったことがないという事実に不信感を抱いている。確かに、間違ってはない。

 メリットがあれば交渉権として差し出すけど……。


「興味はないです。全く。今が楽しいので困ってません」


 現状デメリットの方がデカい。だから色んなものを天秤にかけた時、付き合うという選択肢がない。今が楽しいから必要ないも事実だ。

 今を、無理やり変える必要はない。

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