ヨルの探偵Ⅰ


 そう言い切ると、もう少し恋バナっぽい会話を続けたかったのだろう縁さんが「じゃあ」と笑顔のまま爆弾を落とした。


「この子たちの中だったら、誰と付き合える?」


 思わぬ質問に、一瞬反応が遅れた。
 
 横で静かに飲んでたコーヒーを吹き出しそうになった優介くんが「母さん!」と窘めているけど、縁さんには効いてない。興味津々で私の答えを待ってる。

 莉桜くんは呆れた様子だが、翔くんはやけに静かに黙っていた。

 私は、少し考える素振りをして間を開けたあと、微笑む縁さんに答える。


「そうですね。その質問なら……私は、全員と付き合えます」


 誰と付き合えるか。

 その質問の答えは、全員だ。

 何故なら、私が関わりを切らない時点で彼等のことを多少好いている。情がある。だから、たとえ好きじゃなくても、付き合うという選択はできる。


「ふふっ、そうね。私の質問ミスだわ」

「いえ、面白い機会でした。普段こんなこと考えないので」

「ならよかったわ」

「あと、強いて言うなら、──翔くんとは付き合っても上手くいきそうです」


 ほのぼのした空気の中、一応思ったことを全て口に出すと、横で黙って静かに座ってた翔くんが何を思ったか、急にガンッ! とテーブルに頭をぶつけた。

 衝撃でテーブルが揺れたし、錯乱したのかと驚いた私は横に視線を向けた。

 テーブルに頭をぶつけて俯いてる翔くんの頭しか見えない。多分、向かい側の縁さんにはつむじが見えているはず。


「え、なにどうしたの翔くん? おでこ大丈夫?」

「だ、大丈夫。眠くなっただけ……」

「それはベットで寝た方いいんじゃない?」

「月夜、ほっといていいよ」


 言葉のキレが悪い翔くんに心配になるも、莉桜くんがほっといていいというから、気になりつつも縁さんとの会話を続行する。

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