ヨルの探偵Ⅰ
〈 橘 優介side 〉
月夜ちゃんが、家に馴染んでくれて半日が経った。
最初、母さんが突撃した時はどうなると思ったが、案外肝が据わってる月夜ちゃんは驚いた反応を見せつつも、「いいお家だね」と笑って言ってくれた。
なのに、これは──……
「あはははは! ふりっふりで可愛いじゃん似合ってるよ!」
「……ふっ、かわいいな」
「でしょう!? これ一番お気に入りなのよっ!」
「(……ちーん)」
母さんに着せ替え人形のように扱われ、戻ってきた時には死んだ目をしていた月夜ちゃん。
絶対に本人は選ばないような真っ白のフリルがふんだんにあしらわれたエプロンを着せられて現れたわけだが、カオスな空間が出来上がってしまった。
笑いが止まらない莉桜に、何とか耐えていたが笑いが漏れてる翔、喜ぶ母さんに、本当に魂がどっかに行ってしまってる月夜ちゃん。
「ほんっとに、母さんがごめんなぁ」
ぽん、と肩を叩いて励ますことしか俺にはできなかった。
とは言え、似合ってないわけじゃない。
母さんの趣味で家自体がファンシーでメルヘンだからか浮いてはないし、本人の元が可愛いからこのエプロンを着せられていても変ではない。
ただ、あまりにも表情が無。莉桜に笑われた瞬間、心の声か「(脱ぎたい……)」と切実な願いまで伝わってきた。
「優介くん、夕飯は作るの手伝ってね……」
「あ、あぁ、もちろん」
「ほんと頼むね……。なるべく早く脱ぎたいから……。お願い……」
「……わ、わかったよ」
ぎゅっ、と腕を掴まれて、懇願するような言葉に俺は苦笑いをしながらも承諾した。