ヨルの探偵Ⅰ


 一段落した翌日の朝。

 怜央さんと別れ、私はマレくんたちの待つBARに戻った。古林 はじめからの連絡を待ち、個人的に莉桜くんの母親について調べる。


「基本的なことしかわかんないかぁ」

「何を調べてるんです?」

「個人的に知りたいことがあってね」

「手、怪我してるんですから動かすのは程々にしてくださいね」


 紗夜からの心配の言葉に頷きつつ、怪我した右手を庇ってタイピングを続けた。

 若くして莉桜くんを産んだ母親は、シングルマザーだったようだ。水商売で生計を立てながら、ボロアパートの一室で親子ひっそり暮らしていた。

 写真に写っている若い女性。明るい瞳で中性的な顔立ちが莉桜くんと似ている。

 調べた感じ、親からの虐待や放任ということはなさそうだ。それなら何故、マリカの元に莉桜くんが渡ってしまったんだろう。

 そう考えていると、欲しかった情報が古林 はじめからいくつか送られてきた。


「ハハ、ほんとイカレてる」

「ナンテ?」

「20歳頃から美少年を買っては自分の性癖と欲求を満たして、その後はみんな行方不明」

「クレイジーすぎるネ」

「身寄りのない子供を攫って遊ぶとか、見た目からは想像できない気持ち悪さだよ」


 マリカの異常で歪んだ少年への愛。

 ようやく、全ての言葉の意味がわかってきた。


──「中性的で、綺麗な子がタイプです」


 そりゃ、誰にも靡かないはずだ。

 キャバクラに来る成人した大人の男性や女性に、彼女は興味がない。マリカが求めてるのは中性的で幼い、女装が似合う美少年なのだから。

 人の性癖をとやかく言うつもりはないけど、マリカは確実に常軌を逸している。


「どうせ、最後はみんな地獄の業火で仲良く焼かれるんだよ」


 捕まらないと高を括る馬鹿どもは、全員豚箱にぶち込んでやる。

 くつりと喉の奥で笑いながら、ある送られてきた一通の連絡に目を通した。……予定外だけど、一度家に帰ろうかな。

 そして、私は暑さと戦いながら帰途につくことになる。

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