ヨルの探偵Ⅰ
朝ごはんのクレープを食べ終えた私は瀕死。アルコールが抜けてない身体に生クリームはキツすぎた。
それを見て「無理しなきゃいいのに」と朝陽が呟く。無謀だったけど、食べたかったのは本当だから仕方ない。
「姉ちゃん。砂糖なしの珈琲」
「ありがとう可愛い弟」
「月夜、顔真っ白なんだけど生きてる?」
起き上がって、朝陽が持ってきた珈琲を飲みながら顔色を心配する莉桜くんに小さく頷いた。
本日も麗しい莉桜くんだけど、知ってしまったからか妙に真正面から顔を見れない。ごく自然に彼から顔を逸らした。
そうすると、正面でニヤニヤしてる垂れ目蒼依くんが視界に入ってくる。
ネイビー色の髪から覗くピアスたち。実はこの中で1番蒼依くんがピアスの穴を開けている。両耳合わせて耳朶4つにトラガス、この前なんて臍を開けるか悩んでいた。
「……あれ、翔くんもピアス増やした? てかそのピアスって」
「月夜が誕生日にくれたやつ。新しく開けた」
「ええ、わざわざ新しく開けなくても……」
「特別だからいい」
誕生日に贈ったピアスを弄る翔くんは満足気。喜んでくれているなら良かった。
シンプルなデザインのムーンストーンのピアスは素材のいい翔くんにとても馴染んでいて似合う。それにしてもいつ開けたんだろう?
不思議に思いながら、私はぷにっと翔くんの耳朶を触った。
「……っ」
「あ、ごめん痛かった?」
「そう……じゃ、ねぇけど……」
「人の耳朶っていいよね、ぷにぷに」
硬直したまま動かなくなった翔くん。私は遠慮なくぷにぷにする。
かくいう私もピアス開いてるけどね。マレくんとショットで勝負して潰れた次の日、耳朶みたらいつの間にか開いてたんだよね。お酒って怖い。
懐かしい思い出に苦笑いしてると「俺も開けようかな」と朝陽が言い出すから、翔くんの耳朶から手を離して朝陽の耳朶をぎゅっと押さえた。
「ダメダメダメ、許さん。朝陽は無意味に身体に穴なんて開ける必要ないの。開けるとバカになっちゃうからね。ほら、見てよ。蒼依くんはバカでしょ」
「いくら何でも酷いじゃねぇの」
「姉ちゃんとお揃いにしようかと思っただけ」
「うぐ……っ、可愛い胸が痛む……。でもダメ」
「わかった……」
うわあああ、しょんぼりしないでよー。
よしよしと朝陽のサラサラの髪を撫でながら、「せめて30年後にして……」と言うと「そんなに嫌なのか」と苦笑いの優介くんから返事が返ってきた。
もちろん、とてもやだ。なんとなくやだ。