ヨルの探偵Ⅰ
なにも言ってこない莉桜くんの肩を借りて、眠気と格闘する。
最近ずっと眠いんだけど、こんな寝不足で多忙な女子高生珍しくない……? 自分で選んだことでも今回ばかりはおかしいよね……? ねむねむ。
でも今は寝れない。連絡は迅速に対応しなければならない。
「うー」
「眠いなら寝れば。僕の肩使ってるんだから」
「やめとく、起きれないし」
ぶっきらぼうな物言いに、ちょこっと優しさを含んだ莉桜くんの言葉。甘えたいけど、千尋くんを何とかしないと休むことはできない。
今もどこかで怯えているだろうから。早く迎えに行かないと。
にしてもきな臭い。ほとんど使ってないマンションがブラフだとして、隠れ家ひとつ見つけられない。監視カメラからも辿れないなんて。
誰かが入れ知恵してる……? 考えすぎか。
「うお〜い、月夜ちゃん」
「なにしてんの、蒼依くん」
考え込んでると、私の膝を枕にした蒼依くんが見上げてきた。勉強はどうした。
マイペースキング恭を探せば、朝陽たちのゲームを観戦し始めてやる気を失っている。優介くんが項垂れて方を落としていた。彼は休んだ方がいい。
仕方ないな、と膝に顔を埋めた蒼依くんの髪をくるくると弄る。ほんのり柑橘系の香りがした。
「私の膝枕で寝ようとしないでね」
「1時間いくらですか〜」
「100万」
「お隣の膝は〜」
「は? 僕の膝枕が金で買えると思ってんの」
蒼依くん、まさかだけど莉桜くんの膝でも寝ようとしてたとか言わないよね。
相変わらずの切れ味で会話をぶった切った莉桜くんに苦笑いしつつも、結局夜ご飯の時間まで彼等の課題が進むことはなかった。
18時。冷やし中華をみんなで食べて、うだうだしてると古林 はじめから舞台を整えたと連絡が来る。
それと同時に、ある添付ファイルにマリカの隠れ家らしきアパートとの間取り図が送られてきた。
うん、やっと動いたね。