ヨルの探偵Ⅰ
そもそもこの猫かぶりっつうか、態度の変わり様はなんなの。やべぇでしょ。
もう素を隠す必要がないにしても、最初を知ってる俺からすれば違和感しかない。やることなすことめちゃくちゃすぎ。
「……あ、なんか落ち込んでるとこに追い討ちかけるみたいでごめんね。仙波 蒼依くん」
「なんでフルネーム呼び?」
「ゲームは私の勝ちでいいよね?」
「もうどうでもいいわ……」
疲労の蓄積がヤバい。メーターがMAX。
関わっちゃいけない女だったなー、とテーブルに項垂れると「寝るの? グッナイ」と言われて深いため息を吐いたのは言うまでもない。
この5日間はなんだったのか。何のためにここまで頑張って動いたのか。もうほんと無気力。
疲れて食欲もないまま聞こえてくる会話に耳を傾けていると、またとんでもないことを恭が言い始めてガバリと顔を上げた。
「……bs入るか?」
「ちょ、嘘やめて恭くん。おい、弟も何か言ってやって」
「いいんじゃねーの? 賢いし、綺麗で強かで、俺嫌いじゃない」
「狂っちまったかな翔くん?」
ほんとやっぱ碌でもないな一ノ瀬兄弟の唐突の思いつきは……! と奥歯を噛み締めながら、オムライスの最後の一口を口に含んだ彼女に視線を向ける。
その表情からは何も読み取れなくて困ったけど、すぐ彼女は答えを出した。