ヨルの探偵Ⅰ
ごくん、とオムライスを飲み込んだ後、横に座っている翔を見て、「そうだなぁ」と考えるように斜め上を向く。
「私、君たちと関わりたくなくてゲーム提案したりしたんだけど、約束守ったりしそうに見えないから譲歩しようと思って」
「なにこれ、俺のこと嫌い?」
「ん? 嫌いじゃないよ? ただ平穏に暮らしたいのに君たちと絡むと嫌でも目立つし、面倒事に巻き込まれる。──だから、私に踏み込みすぎないっていう条件付きで友人になろうよ」
おん? 私生活に踏み込みすぎるなってこと?
首を傾げた全員に「私は振り回されるより振り回す方が好き」と女が言う。傍若無人でしかない台詞だけど、おそらくこの場合はちゃんと意味があるんだろう。
もう関わる気が失せた俺と違って、ランランに目をギラつかせてる一ノ瀬兄弟が彼女を放置するわけない。
つまり、今回助けたから手打ち。私の意見も入れてと言うことか。
なんつー遠回しで回りくどいやり方を思いつくんだこの女は。
未知数。不思議。危ない。
目を瞑って、俺はもうこの女ほっとこ、と思った思考を、数秒後ひっくり返すことになる。
「つまり、探るな。線引き守れ。ってこと?」
「そ、翔くん。頭いいねぇ」
「わかった。あと、ほんとにいんの?
────────……夜の探偵屋」
はた、と翔以外の動きが止まった。
何気なく落とされた爆弾に、全員が彼女に視線を向ける。
そうだ。この女。
何も知らないわけがない。