ヨルの探偵Ⅰ
仙波蒼依に持ち掛けたゲームに意味はない。ヤクザのことを最初は知らなかった。危ない目に合わせるつもりはなかった。
ぜーんぶ、────ウソ。
「バレない嘘は、嘘じゃないもんね」
そう言ったのは、マレくんじゃん。
にっこり。作った笑みを向けて私だけ悪者にしないでよ? と顔を傾けると、マレくんはすっとぼけたような表情をするから怒りのメーターが上がる。
けど、いちいち怒ってたら疲れるだけ。
「(いつか仕返ししよ)」
マレくんとのやり取りで勝てない私は、さっさと諦めて今回の出来事を頭の中で整理した。
まず、ゲームに意味はあった。ヤクザの話も知っていて、危険だと初めから分かっていた。
それは、2ヶ月前、ある話を紗夜から聞いたから。
──「歓楽街を中心に、私たちに便乗したお馬鹿さんが湧いてるよ。目に余ってきたし、消しちゃおっか」
それが始まり。
あの4人のお馬鹿な同業者以外にも、幾つか目障りになってきた集まりを経営困難になるよう紗夜に追い込んでもらった。
評判も悪いガラの悪いチンピラ風情、簡単に潰すことができたけど、ここからが問題。
早々に潰せたのは良かったけど、後にそのお馬鹿な4人が黒羽組若頭の隠し金と薬をだまくらかす舎弟からちょろまかしてた事が発覚した。