ヨルの探偵Ⅰ


 なんて運の悪いお馬鹿さん達だとマレくんと笑いあった翌日、一本の依頼が入った。


 ────黒羽組若頭を、極道の世界から追放したい。


 そういう依頼内容が入った。

 小者でありながら若頭という立場の権力を濫用し、理不尽な命令や行動をしていた男を疎まない奴はいなかった。

 贔屓のキャバ嬢ですら、どうにかしてほしいと匙を投げる始末。

 それに下から不満が募らないわけない。周りからの痛憤がピークに達した頃、我慢の限界がきた大物さんが動いた。


「……まーさか、黒羽組組長さん直々に若頭を追放したいなんてねぇ」

「ビックリしたネ!」


 呟いた言葉を、マレくんが拾う。

 確かに、あの依頼が入った時、依頼相手に驚いたのは言うまでもない。下っ端からの依頼ならまだしも、組内で一番の権力者。組長だ。

 しかし、理由を聞いて納得した。依頼を受けない理由がなかった。


「この前なぁ、俺の失脚を狙ってるなんて話を聞いちまってな。もう俺も歳だ……。世代交代も考えていたが、売春にシャブにやり過ぎだ。アイツは任せられん。上に立つもんは、下に誰かがいて成り立つもんだ」


 一方通行じゃなく、誰かの為を思って行動することが大事だという。ヤクザにもまともな感覚の人もいるんだと考えを改めた。

 そして、報酬は半分お金、半分は治安の改善で依頼を引き受けることとなった。

 治安改善は、これから頑張ってくれるだろうから楽しみだ。

 輩が増えないことを祈る。

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