ヨルの探偵Ⅰ


 負けず嫌いな私は仕返しを考えながらも、割としっかりとした足取りでマンションに着いた。玄関で靴を脱ぎ、足音を立てないように酔いを覚まそうとキッチンに水を取りに行く。

 ミネラルウォーターを冷蔵庫から取り出して付けっぱなしのテレビを消そうとソファーに向かうと、朝陽と虎珀くんが寝落ちしたようにスヤスヤ寝ていた。


「寝顔はまだ子供だなぁ」


 起こさないように、ちょんちょんと朝陽の頬っぺを突くと「⋯⋯ん」と声を漏らす。

 この感じは、虎珀くんに付き合って眠気に限界きてそのまま寝ちゃったってことだろうなぁ。可愛い。

 私は寝落ちた2人にブランケットを掛け、柔らかい髪に手を伸ばして起こさないようにゆっくり撫でた。


「ほわー、さらさら」


 染めたことのない真っ黒の髪は綺麗で触り心地が良く、少しつり目で睫毛の長い、美少年の顔立ちは姉から見ても自慢できる。

 もちろん、虎珀くんも同様に顔がいい。ヤンチャな雰囲気は否めないが、子犬顔というかぱっちりしたお目目と八重歯がトレードマークで朝陽同様目立つ容姿。

 まぁ、私から見たらどっちもただ可愛いだけの弟と弟分だけど。

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