ヨルの探偵Ⅰ
ツンデレ黒猫とまだ子犬のゴールデンレトリバーみたいだ。寝てる2人の寝顔を見ながら、自然と笑みが浮かんだ。
その2人の姿を、音が出ないよう無音のシャッターで写真に収めて保存する。
ずっとこのまま何も分からない子供でいてくれたらいいのに、と混沌した感情が入り混じって、そのままリビングを出た。
真っ暗な廊下に佇んで、家主不在の無駄に広く部屋数の多い家にため息を零し、そろそろ帰ってきてくれていいじゃんとぼやく。
何ヶ月も姿を見てない。
「どこで何してるんだか」
検討はつくけど、無意味だからやめた方がいいって忠告したのにな。
ズルズルと壁に背を預けてしゃがみこむ。ひんやりとした廊下の冷たさを感じながら、あの日の情景が脳裏に浮かんで吐き気がした。
血塗れで横たわる人たち、光る鋭いナイフ、顔が見えない憎いアイツ。
「いっそ……」
出かけた言葉を飲み込む。
口に出してしまっては終わりだから。物語の終焉にはまだ程遠い。私は誰のものでもなければ、誰の操り人形でも、都合のいいものでもない。
誰かの思惑通りに動くのは、ごめんだ。
ぎゅ、っと拳に力が入る。
忘れかけた感情に見ないふりをして、愚かな私は夢の世界に飛び込んだ。