離婚後、全てを失った私が、あの財閥御曹司に溺愛されるまで

第2話 盗聴器から聞こえるあの声

悠人は体が固くなり、受動的に私にキス受け止めてしばらくすると、すぐに離れようとした。
「洋子、こんなことはダメだ、子供のことを考えて。」

私は彼を放さず、ぼんやりと彼を見つめながら、甘えるような、そして少し傷ついた表情を浮かべた。
「医者なんだからわかってるでしょ?妊娠初期を過ぎれば問題ないって、少し気をつければ大丈夫だよ。悠人、私はあなたが必要なの。離れないで。」

それでも彼は強引に私から離れ、イライラしながらネクタイを引っ張った。
「シャワーを浴びてくる。」

実際、私はそれほどお酒を飲んでいなかった。妊娠しているから、そこはちゃんと分かっている。私はただ、赤ワインを香水代わりに使っただけだ。

シャワーの音が聞こえ、だいたい10分ほど経った後、シャワーの音が止まり、悠人の足音が寝室の前を通り過ぎ、特に立ち止まることはなかった。

そして、次に書斎のドアが閉まる音が聞こえた。

私は布団の中に縮こまり、一時間ほど悶々とした後、ようやく勇気を出してヘッドフォンをつけ、震える手で盗聴器のアプリをスマホで開いた。

今日の午後、買い物に出たついでに、私は盗聴器を購入していた。

書斎のリフォームの際に防音処理を施していたが、悠人は私がベッドの下に盗聴器を仕込んでいることに気づかないだろう。
ヘッドフォンからは悠人のあの馴染みの息遣いが聞こえてきて、私は鼻がつんと痛くなり、涙が溢れてきた。

彼はやはり私の体には興味がないのか。欲しいと思っても、冷たく私を押しのけて。
だが、次に聞こえてきた音に私は衝撃を受けた。

「もっと声を出して、君の乱れた声が好きなんだ、ああ…」
悠人のその一言一言が私の耳に響き、まるで爆発するように私の中で響いた。
そして、次に女性の喘ぎ声がはっきりと聞こえてきた。
二人の声が重なり合い、激しさを増していった。

私の胸は激しく痛み、涙が止まらず、枕を濡らしていった。私はヘッドフォンを外し、全身が力を抜けるようにベッドに横たわり、そのまま一晩中眠れなかった。

それでも、私は書斎に女性がいるとは信じられなかった。もしかしたら、彼は誰かとビデオ通話をしていたのか?

盗聴器しかを仕込んでいなかったことを後悔した。微型カメラも仕掛けるべきだった。
もう一度書斎に行き、何か手がかりを見つけようと決心した。

翌朝、悠人が出かけた後、私は急いで起きずに、証拠を見つけることに対する恐怖と好奇心の間でしばらく葛藤していた。

10時過ぎにようやく、私は書斎の前に立った。
ところが、手をドアノブにかけた瞬間、悠人が突然帰ってきた。

私は慌てて手を引っ込め、書斎の前を通り過ぎるふりをして、ソファに座り、テレビのリモコンを手に取った。緊張しすぎて何度もボタンを押し間違え、ようやくテレビをつけた。

悠人は、休暇を取って、私を旅行に連れて行くつもりだと言った。

彼は仕事中毒で、結婚したときには蜜月旅行すらなかった。だから、休暇を取って旅行に行くなんて彼らしくない。
だが、彼は平日は仕事ばかりで私をかまわなかったから、少しでも私に時間を作りたかったと言った。

昨夜の発見があったため、私は彼の言葉に少し胡散臭さを感じた。
それで、私は彼の目をじっと見つめ、何か真実を見抜こうとした。
しかし、彼は平然としていて、私に対して悪いことをしている様子はなかった。むしろ、私が疑いすぎだと思われているようだった。

私は何事もなかったかのように、簡単な荷物をまとめて、彼と一緒に階下へ降りた。

私はもう26歳だ。十代のような衝動的な年齢ではない。
だから、真実が明らかになるまで、彼に気づかれないようにするつもりだった。

この年齢にふさわしい冷静さはあっても、先を見通す力はない。
結果、私はとうとう彼の罠に嵌り、彼に無情に地獄へと突き落とされてしまった。

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