イケメン友達ドクターによる真夜中の診察は
 疲れた。
 私はため息をついて自宅の玄関を開けた。
 ひとり暮らしで、出迎える人は誰もいない。

 最近は残業ばかりで部屋の掃除もできずにいる。隅にたまったほこりを見ないふりでやりすごし、コンビニで買ったお弁当をレンチンする。
 もう十時を過ぎている。こんな時間に食べたら太ると思うのだけど、おなかがすいているから食べないでいることもできない。

 今日は一日、さんざんだった。
 その上せっかくの金曜日だというのに、遊びにも行けずに仕事で終わり。土日もなんの予定もない。三十歳にもなって彼氏もなくこんな夜を迎えて、零れるのはため息ばかり。
 チーン、と音がしたレンジからお弁当を取り出し、ローテーブルに置く。

 食べ終えて一息つくと、妙に頭が痛いことに気が付いた。
 そうだ、昼間に頭を強打したんだった。
 触ってみると大きなたんこぶになっている。
 こんなになってて、大丈夫なのかな。
 一度不安になると、どんどん不安が増していく。明日は土曜日で近所の病院はやってない。

 高校時代の友人が医者になっていたから、『頭打ったけど大丈夫かな』とメッセージを送ってみた。男性だけど、友人としてずっと仲良くしている。
『今からうちの病院においで。診てあげるから』
 と言われた。
 まだ着替えてなかったし、私は『すぐ行く』と返事をしてバッグを持って家を出た。
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