弱気な誘惑 〜Under the Mistletoe〜
 一旦、友達以上恋人未満という関係に陥ってしまうと、何とも厄介だ。
 その曖昧さが心地よいと感じていたはずなのに、あまりにもそれが長く続くと、流石に苛立ってしまうのは身勝手だろうか。

 大学1年の初冬、こうして一緒に屋台でおでんを食べている柴ちゃんが、まさにその相手である。
「お兄さん。可愛い彼女とのデートなのに、こんな屋台でいいのかい?こっちは有り難いけどさ」
 屋台のおやじさんにそんなことを言われ、思わずむせてしまう。
「大丈夫?」
 柴ちゃんは、優しく背中をさすってくれるが、確かにモヤモヤする。
 勿論、それはおでん屋が嫌ということではなく、いつまで経っても進展しない関係であることに。
 本人の口からは一度も、私のことをどう思っているか聞いたことはない。

 柴ちゃんとは中学時代に知り合い、すぐに意気投合したということもあり、周りからは怪しい関係だと言われてきた。
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