弱気な誘惑 〜Under the Mistletoe〜
 私がつい慌てて否定してしまうのに対して、柴ちゃんはいつも、少し照れたように笑っているだけ。
 放課後も、私は部活の友達と一緒のことが多かったから、帰りに玄関で柴ちゃんと鉢合わせても、みんなで集団下校状態になっていた。

 高校生になっても、週末に二人で会うようなこともなく、卒業と同時に会えなってしまうのだろうと思っていた。
 私もそうなのだが、指定校推薦の場合、どこの大学を受ける、受かった、ということに関しては箝口令が敷かれていたので、もう進学先が決まった、という曖昧なことしか言えないまま。

 卒業式の直前、柴ちゃんから合格の朗報を聞いた。
 地元からは、関西に進学する人のほうが圧倒的に多い。
 だから、まさか同じ都内の大学で、おまけに下宿先まで近くになるとは想像もしておらず、本当に嬉しかった。
「おめでとう!」
「ありがとう。これからも一緒に居られるね」
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