異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「聖女キララ様。大変恐れ入りますが、あなたが現状どの程度聖なる力をお使いになれるのか、確認させて頂けますでしょうか」
「わぁ! すっごくイケメン!」

 上司とともに神殿の大広間に戻ったカイブルは、聖女からそう叫ばれて露骨に眉を顰めた。

(なんですか。この非常識な女は……)

 ただでさえ不快感を感じていたのに、声を聞くことすらも嫌になった瞬間だった。

(会話すら、まともに成立しないなど……)

 こんな女の聖なる力がどれほどのものかなど、確認するまでもない。

 本物だろうが偽物だろうが、さっさと追い出してしまえばいいのだ。
 命からがら逃げ出した、ロルティのように。

「彼の名は、新米聖騎士カイブル・アカイム。私の部下です」
「あたし、五月雨雲母! よろしくね!」

 キララから笑顔で手を差し出されたカイブルは、絶対に手を触れ合わせたくなかった。

(私の心は、ロルティ様のものです)

 一瞬たりともキララに気のある素振りなど見せたくない。
 たとえそれがただの挨拶で、必要なことであったとしても――。

 だからカイブルは、あえて小さく頭を下げるだけで留めたのだが……。
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