異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
2・見習い聖女、パパと出会う
「つ、着いた……!」

 小さな穴から抜け出したロルティは、うんしょっと声を出しながらどうにか地面に両足をつけ立ち上がる。
 大きく背伸びをした彼女は、キョロキョロとあたりを見渡した。

(どこに行けばいいんだろう……?)

 前後左右は見渡す限り木々が覆い茂り、進むべき道らしき通路は見当たらない。
 ただ1つ確かなことがあるとすれば、ロルティが通ってきた穴の出口は迷いの森にある開けた場所に繋がっていたと言うことだけ。

(困ったなぁ……)

 カイブルはロルティに1人で小さな抜け穴からここに来ればいいことがあると話してくれたが、それがどういったものなのか幼子には想像がつかない。
 あれこれと試行錯誤をしたいのは山々だが、鬱蒼と覆い茂る木々の中に紛れて迷子になってしまえば、神殿で暮らしていた頃と変わらぬ生活を続けなければいけなくなる。
 そう考えると、ここでじっとしていた方がいいのではないかと思う気持ちがないわけではなかったが――。

(とにかく、森を抜けなくちゃ)

 迷いの森で生涯を終えるくらいなら、1人で脱出してきた意味がない。
 ロルティは右手の人差し指を1本立てると、歌いながら四方八方へ順番に指し示し始めた。
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