異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません！

「わ、きゃあ！」
「ずっと会いたかった。俺の愛しき娘……」

　アンゴラウサギを抱きかかえたまま突如初めて感じた浮遊感に戸惑っていれば、彼はロルティの額へ当然のように口づけた。

（ど、どう言うこと……？）

　彼女は頭の中で大量のはてなマークを飛ばしながら、アンゴラウサギを抱きしめて固まる。

「おじしゃんじゃなくて、パパなの……？」
「ああ。そうだ。迎えに来るのが遅くなって、本当にすまなかった……」

　ロルティの父親と名乗った男性は今にも泣き出しそうなほど瞳に涙を浮かべると、低い声で宣言した。

「もう二度とロルティを、神殿に奪わせるようなことはしない」

　その言葉を耳にした彼女は、じっと彼の瞳を見つめて思案する。

（これがカイブルの言ってた、いいことなのかな……？）

　その疑問を解消してくれる人は、残念ながらこの場所には存在しない。
　ロルティは自称父の言葉を信じていいのかと不安になりながら、ポツリと呟いた。

「でも……。神殿にはカイブルが……」

　このまま父親の言葉を信じて行動をともにする決意をしたら、彼ともう二度と会えなくなるのではないかと心配なのだろう。
　娘が浮かない顔をしていると気づいたジェナロは、当然のようにカイブルのフルネームをロルティに告げた。