異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「ロルティに仇するのであれば、斬り伏せればいいか……」
「むきゅ!?」

 アンゴラウサギは父親の呟く声に身の危険を感じたようだ。

 ぎくりと両耳をピンと伸ばしたかと思えば、ブルブルと全身を震わせてロルティに助けを求めた。

「もう、パパ! うさぎしゃんは、悪い子じゃないよ!」
「きゅぅ……!」

 胸元に縋る獣がかわいそうになったのだろう。
 彼女がぷっくりと頬を膨らませて怒りを露わにすれば、「助かった」とばかりにアンゴラウサギが甘えた声を出す。

 ジェナロはそんな娘と1匹の様子を目にして苛立ちを隠しきれないかと思われたが――優しい微笑みを浮かべてロルティを獣ごと胸元に両手で抱きかかえると、彼女に告げた。

「ああ。わかっている。疑って、悪かったな」
「パパ……!」

 普段のジェナロを知る人物がこの場にいれば、「あれは本当にハリスドロア公爵なのか?」と疑問を抱かれていたに違いない。

 出会って3秒で顔を合わせて鼻の下が伸びる姿を隠しきれない父親の様子など一切気にしていないロルティは、ご機嫌な様子で叫ぶ。

「それじゃあ、パパのお家へレッツゴー!」

 こうして彼女は、ハリスドロア公爵家へ向かった。
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