異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 もしも不敬を働けば、一生見下し蔑み続けられてしまう・

 神殿でロルティを虐げる養父が彼女に向ける視線と酷似していて――。
 不安でいっぱいになった幼子は、唇を噛み締めながらじっと少年の言葉を待った。

「うん。知ってるよ。父さんから、聞いたからね」
「え……?」

 彼女はぽかんと口を開けて、少年を見上げた。

 先程までの剣呑な雰囲気が嘘のように、優しい声音で話しかけて来たからだ。

「はじめまして、ロルティ。僕はジュロド・ハリスドロア。君の兄だよ」

 ロルティには何がなんだか、さっぱり理解できなかった。

 ある日突然父親が迎えに来て公爵家に連れて来られたかと思えば、兄と名乗る少年と引き合わされたからだ。

「お兄、ちゃん……?」
「そうだよ。父さん。説明していないの?」
「……ああ。顔合わせを済ませてからの方が、信憑性が増すだろう」
「父さんはどれだけロルティに、信用されていないんだ……?」

 初めて声を聞いた時とは打って変わり、彼は優しげな声音で思案する。
 その視線にロルティに対する敵意は感じ取れない。

(見間違い、かな……? それとも、演技……?)

 どちらなのか自分では判断できず、ロルティは不安そうにジェナロへと振り返って彼を見上げた。
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